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2018/10/11

アン・ファウスト-スターリング『セックス/ジェンダー――性分化をとらえ直す――』出版のお知らせ

会員による翻訳書をご紹介します。


Anne Fausto-Sterling (2012).
『Sex/Gender: Biology in a Social World』Routledge

アン・ファウスト-スターリング(著)
福富護・上瀬由美子・宇井美代子・立脇洋介・西山千恵子・関口元子(訳) (2018).『セックス/ジェンダー――性分化をとらえ直す――』世織書房
出版社   http://ur0.biz/MhPS 
アマゾン  http://ur0.biz/MhPZ

--------以下は,「訳者あとがき」を一部書き直したものです--------------

本書は生物学者のアン・ファウスト-スターリングの3冊目の
著書を翻訳したものである。
ファウスト-スターリングの著書のうち,
『Myths of Gender: Biological Theories About Women and men』(1985)の
邦訳『ジェンダーの神話:「性差の科学」の偏見とトリック』
(池上千寿子・根岸悦子訳,工作舎,1990年)が出版されている。

さて,20世紀半ばを過ぎる頃から,
生物学的性はセックス,社会的性はジェンダーと呼ばれるようになった。
その後,セックスとジェンダーは別の次元のもの,
セックスは遺伝的に決められたものであり,
文化的・社会的な影響を受けない絶対的な基準であるという考え方
持たれるようになった。

それに対して,ファウスト-スターリングは,
生きている身体は社会的・歴史的文脈に対する反応として,
常に発達し変化していくダイナミックなシステムであり,
セックスとジェンダーを固定化してはならないと主張する。
さまざまな分野の科学的知見を引用しながら,
ある種の遺伝子が環境からの影響を受けて変貌することもありえることを示した。

原著のタイトルは,「SEX・GENDER」でも,「SEX and GENDER」でもない。
「/」(スラッシュ)を用いて,「SEX/GENDER」としているところは,
セックスとジェンダーを区分けすること自体が難しいことを意味していると思われる。

同時に,ファウスト-スターリングは,
「セックスとジェンダーは別次元のもの」,
「セックスは文化的・社会的な影響を受けない」という考え方が,
生物学などの自然科学においてもその科学的営みを
いかに方向づけているかを論じている。
価値中立的であると捉えられがちな科学研究であるが,
どのようにセックス/ジェンダーを捉えているのかについて,
研究者自身も自分が有している枠組みを自覚することの重要性を指摘している。